プロジェクトを適切に運営できれば、当初目標の達成以外にも、副次的に得られる効果も大きくなる

プロジェクトを完遂させるのは、非常に大変です。しかし、プロジェクトをなんとか成功に導いた後には、当初のプロジェクト目標が達成されるだけでなく、大きな副次的効果があります。

プロジェクトで苦労するもののひとつが、ガバナンスです。しかし、このガバナンスを獲得することで、プロジェクト完了後に大きな可能性が広がってきます。今回は、そういったお話をさせて頂きます。


代表的なプロジェクト副次効果

プロジェクトは、掲げた目的を達成するための取組みです。そのゆえ、その目的を達成することは、プロジェクトで獲得すべき大事な導入効果です。

プロジェクトの目的(達成したいこと)

  • 会社や部門の変革のために組織や業務を変える
  • 変革を支えるシステムを定義・導入する

プロジェクトを完遂させることは、簡単なことではありません。その要因のひとつが、ガバナンスです。一方で、プロジェクトのなかで苦労して獲得したガバナンスが、大きな副次効果をもたらします。

代表的なプロジェクトの副次効果

  • 業務上の強いガバナンスの獲得できる
  • 組織再編・変革の実現が容易になる
  • IT組織刷新の契機になる

こうやって見てみると、副次的効果自体も、正規のプロジェクト目的に格上げしても良いくらいです。

実際、副次的効果を意識してプロジェクトを進めるか否かは、プロジェクト完了後の可能性だけでなく、プロジェクトの成否そのものにも影響を与えます。

では、どういうことを考えながら、プロジェクトを進めていくべきか、お話していきます。


副次的効果は、どうして得られるのか

前述の主な副次効果を例に、説明していきます。

業務上の強いガバナンスが獲得できる

グローバルプロジェクトを例に取ってみましょう。

このプロジェクト開始前は、各国でバラバラなERPシステムを使っていました。プロジェクトを契機に、日本、中国、東南アジア、欧州、北米で、それぞれ域内テンプレートを作くろうとしています。

欧州域内の業務プロセス標準化を見てみましょう。欧州テンプレートを作成するために、以下のようなチーム体制が必要になります。

ここで重要なことは、プロジェクトを遂行するために、以下の2点が必要となることです。

  • 欧州横断でのチームや活動
  • 日本本社と欧州横串チームとの連携

通常のビジネスや職制では、強いガバナンスは必要なかったかもしれません。しかし、業務プロセスを標準化していくためには、強いガバナンスが不可欠です。そして、標準化を実現するために、強いガバナンスが獲得せざるを得なくなります。

結果として、プロジェクトの成果は、単に、業務プロセスが標準化されたシステムが導入されただけではありません。

以下のように、ビジネス・業務のお粉うえで、欧州一体運営を可能とする様々な資産が得られるのです。

日本本社目線では、それだけではありません。

プロジェクトを通じて、日本本社から各地域へのガバナンスを効かせていくことで、プロジェクト完了後は、各地域へのガバナンスをより強化させることができるようになります。

組織再編・変革の実現が容易になる

次は、M&Aを通じて大きくなってきたある企業グループにおいて、事業をまたぐようなシステムを導入するケースを取り上げます。

プロジェクト開始前は、M&Aで吸収した会社が使っていたシステムが残っており、事業部や子会社でバラバラなシステムを使っていました。

このプロジェクトでは、あるERPパッケージを使って、受注品プロセスと量産品プロセスの2つのテンプレートを作成。事業部・子会社のビジネスの特性に応じて、利用して貰うことにしました。

業務プロセスを標準化していくことは、非常に難しいことです。しかし、業務プロセスが標準化できたことで、この企業は、その後、以下のような事業再編を行うことができるようになりました。

IT組織刷新の契機になる

上記の企業の例では、事業部や子会社でバラバラなシステムを使っていたこともあり、それぞれにIT部門を抱えていました。そのため、各事業部や子会社に対するITサービスの提供において、要員不足やスキル不足といった問題に直面していました。

しかし、今回、同一のERPパッケージを全事業部と子会社に導入したことにより、基幹業務システムに対するIT人員を一か所にまとめることができるようになりました。

このように、システム導入の際には、これまであった複数のシステムをまとめて、ひとつの仕組みに置き換えることが多いため、IT部門を刷新する非常に良いチャンスになっていることが多いです。

しかし、これらチャンスも、意識してプロジェクトを運営していかないと、見落とされがちです。意外に多くのプロジェクトで、せっかくの副次的効果が獲得できないまま、プロジェクトが終わっているケースを見かけます。


副次的効果を意識的に獲得しにいく

ここで、残念ながら、副次的効果をみすみす手放してしまっている例を見てみましょう。

  • 横串のコミュニケーションを、ITパートナに任せっきりになり、自社社員が経験を積む機会が無かった
  • 重要なポジションに、既に経験のある50代の人材に任せたため、30代や40代の中堅社員が経験する体制になっていなかった
  • 横串の活動で大きな活躍をした中堅社員がいたが、プロジェクト完了後は、全く関係ない部門に異動した
  • プロジェクト中に大きく成長した若手社員がいたが、プロジェクト完了後は、他社に転職した
  • プロジェクト中に整備されたガバナンス体制やルールを、プロジェクト完了後に、定常組織に引き継がなかった

非常にもったいないことです。

ユーザ企業によっては、これらの副次的効果、積上げた資産を失わないように、計画的に定常組織を立ち上げ・引き継いでいく例もあります。

プロジェクトの目的だけでなく、こういった副次的効果にも目を向けて、大きくシステム導入効果を刈り取ることをお勧めします。


今回、プロジェクトの副次的効果を取り上げた理由は、意外に多くのプロジェクトで、この絶大な効果をみすみす逃しているからです。言われてみると、その通りと納得頂けると思います。しかし、プロジェクト遂行中は、色々なことに忙殺されて、ついつい忘れがちになっているように見受けます。

そのため、プロジェクト開始前や構想フェーズにて、明確に取り上げて、プロジェクトの目的に昇格させることが重要です。さらに、プロジェクトの定期報告においても、取り上げることが有用です。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。ご意見・ご感想を頂けますと幸いです。

ITプロジェクト研究会