プロジェクトの規律が守られるかは、「PMO」がカギを握っている

意外に多くのプロジェクトで、PMOが、事務的な仕事ばかりしていている状況を見かけます。そして、そういうプロジェクトは、たいていうまく行っていません。
PMOは「Project Management Office」の名前が示す通り、プロジェクトマネジメントのための重要なチームです。事務方(じむかた)ではありますが、事務的な仕事ばかりしている訳ではなく、裏方として、時には表に出て、プロジェクト運営を円滑に回すための存在です。
今回は、あるべきPMOのあり方について、光を当てていきたいと思います。
PMOの役割
PMOの役割は、大雑把に言うと、以下の2つだと考えています。
① マネジメントへの見える化
プロジェクトのマネジメントメンバに、分かりやすくプロジェクトの状況を伝える。それにより、彼らが正しく状況を理解して、適切な判断や指示が下せるようにする。
② プロジェクト管理の定着化
プロジェクトチームやメンバが守るべきルールや会議体などを提供する。それにより、プロジェクトリーダが考える通りに、各チームやメンバが動けるようにする。

今回は、プロジェクト管理の定着化について、深掘りをしてきたいと思います。

プロジェクトが従うべきルールを提示・徹底させる
PMOの大きな役割の一つは、プロジェクトメンバが従うべきルールを決めて、提供することです。
例えば、以下のようなものがあります。ほんの一例ですが、プロジェクト運営にとって、とても大事なものです。
- プロジェクトのマスタスケジュール
- プロジェクトフェーズの定義
- 各種ドキュメントのフォーマット
- 進捗管理やレポーティング、エスカレーションのルール
- 会議体
各種ドキュメントのフォーマットを提供する意義
課題管理表や進捗管理表など、プロジェクトが利用するドキュメントのフォーマットを定義して提供するのも、PMOの大きな仕事です。その際、その重要性がきちんと伝わっていないため、逆に、PMOは「形式を整える事務的な人たち」と思われがちです。
しかし、ドキュメントのフォーマットを定義するということは、プロジェクト管理において、極めて重要な意味を持ちます。
下記は、プロジェクトマネジメント課題一覧のフォーマットイメージです。

ここでは、フォーマットを定義することで、プロジェクトリーダ目線で、以下の2つを実現しようとしています。
- 一覧の運用により、マネジメント課題として認識すべきものを漏れなく把握できるようにする
- 課題の内容や、解決に向けた段取りなど、知りたい情報を知りたい切り口で確認できる。必要に応じて、各チームに適切な指示出しができる
つまり、フォーマットは、ただの形式ではなく、自分が望む方向に、相手を促すためのものなのです。その特性を理解して、プロジェクト運営できるかが、プロジェクトの成功を左右すると言えます。
ただ「フォーマットを用意しても、なかなか意図通りにはいかないよ」という声も聞こえてきそうです。では、どうするか。
それらを定着させるのも、PMOの大事な仕事になります。
会議体を持つ意義
ここで会議体が重要な意味を持ってきます。
例えば、あるチームが、進捗報告を出してこなかったとします。PMOメンバが、個別にチームリーダに催促しても、適当にあしらわれてしまうことも多いのではないでしょうか。
PMOメンバが、電話で個別確認した場合

販売チームの作業遅れについて、進捗報告書に遅延理由が記載されていないです。記載して、出しなおして貰えますか。

リーダ
あ、すみません。いま、緊急の課題があって、それどころじゃないんです。今週はスキップさせてください。

先週も、そう言ってませんでしたっけ...

リーダ
いやぁ。最近ずっと、立て込んでて...
進捗報告は、プロジェクトの基本です。いくら忙しいからと言って、基本が出来なくなってくると、プロジェクトは徐々にカオスに向かっていきます。
そこで、会議体をうまく使って、各チームの行動を促すことが大事になります。
全体進捗会議などの場で、プロジェクトリーダの権威を借りつつ、全員がルールを順守するよう促していきます。プロジェクトリーダは忙しいですから、会議の場で、まとめて対処していくのが効率的です。
プロジェクトリーダが直々に、全体進捗会議の場で確認した場合

リーダ
今週は、緊急の課題があって、進捗報告を詳細にまとめる時間がありませんでした。

リーダ
進捗報告は、プロジェクトの基本です。この進捗会議の後にすぐ、進捗報告書を更新して、提出しなおしてもらえますか。
もしその余裕がないのであれば、なぜ余裕がないのか、いつ解消するのかを今説明してください。困っていることがある時こそ、報告をお願いしますね。
そういうやり取りを繰り返しながら、思い描いているプロジェクト管理を、徐々に定着化させていくのです。
一朝一夕には、定着しません。数か月は掛かると思って、粘り強く取り組んでいくことが必要です。

ここまで、会議体をうまく使って、プロジェクト管理を定着化させていくというお話をしました。
実は、会議体については、他にも重要な役割があります。
会議運営を担う意義
PMOは、プロジェクトの全体進捗会議や、プロジェクトマネジメントへの報告会を取り仕切ったりします。
それら重要な会議で、何をどう伝えるのか、何を相談・議論するのかは、PMOが取り決めていきます。つまり、各チームやマネジメント層とのコミュニケーションを通じて、プロジェクトをどの方向に導いていくのかも、PMOの仕事なのです。
下記は、週次の全体会議のアジェンダです。各チームの人には、ただの形式に見えるかもしれません。ただ、よくできるPMOは、この会議を利用して、誰にどんな話をして貰うのか、何を議論するのかをコントロールするのです。

残念ながら、未熟なPMOの場合は、ただの形式に終わってしまい、参加する意義も低い会議になってしまうこともあります。その結果、必要なコミュニケーションが不足して、プロジェクトが悪い方向へ転がっていくこともがあります。
PMOがちゃんと機能しているかどうかが、プロジェクトの成否に大きく影響するのです。
PMOは、事務ワークをする人たち、形式を整えるだけの人たちと思われがちです。
しかし、これまで見てきたように、本来は、プロジェクトの命運を左右する非常に重要な人達です。ここに良い人材を配置し、適切に動いて貰うことが、プロジェクト運営を適切に行うために不可欠です。
これらの役割を全うするために、PMOは、様々なチームとコミュニケーションしていく必要があります。どのように、それを実現するのかについては、また別の回で取り上げたいと思います。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。ご意見・ご感想を頂けますと幸いです。
ITプロジェクト研究会



