社長直轄プロジェクトの罠 | 社長直轄にすることで、かえって悲しい結果になることもある

近年は、DX機運の高まりもあり、ITプロジェクトに対する重要性も非常に大きくなってきました。そのため、全社の命運を掛けるようなプロジェクトも多くなり、社長直轄と銘打つものも珍しくなくなってきたように見受けます。
しかし、本来は、プロジェクトを大きく後押しするはずの「社長直轄」が、かえって、悲しい結果を生み出している状況も多く見かけるように思います。今回は、どういうことが起きがちなのか、どうすれば回避できるのかについて、お話していきます。
社長直轄にする意義
まずは、社長直轄にする意義から見て行きましょう。
「社長直轄」を掲げるメリット
- メッセージ性が強くなる
- 全社的な優先順位が上がる
- 組織の枠を超えた連携が容易になる
- マネジメントの意思決定が速くなる
一番のメリットは、「このプロジェクトは、とても重要だ」と、皆が思うようになることです。
例えば、プロジェクトで大変苦労することのひとつが、人材の獲得です。各部門とも、良い人材は、自部門の成績に直結する通常業務に充てたいところです。そのため、良い人材は、手元に置いておきたいというのが本音のところだと思います。しかし、社長直轄にすることで、部門長も「重要なプロジェクトだから、人材を提供しないといけない」と思うようになります。これが、社長直轄にする大きなメリットです。
ただ、実際には、積極的に人材を提供しているというよりは、社長案件なので「致し方なく手放す」と言う方が、実情に近いかもしれません。ここに、社長案件の難しさがあります。
「納得している訳ではないけど、社長案件なので、従わないといけない」
こういう気持ちで、協力している人が多い場合は、プロジェクトは成功から遠ざかっていきます。この心理は、プロジェクト内部でも起きえます。
社長と現場との距離が生む、悲しい状況
ひとつの原因は、やはり、社長と現場の距離が遠いことにあります。社長は、同時並行で、色々な重要案件を抱えています。そのため、ひとつに案件に掛ける時間は限定的です。
そうすると、必然的に、社長に近い人たちとしか会話しない状況になります。


結果として、社長と現場メンバとの間には、大きな乖離が発生していきます。
現場メンバの目線
- 社長の熱量が伝わってこない
- 社長が積極的に関わっているようには見えない
- 一方で、異論は唱えられないように感じる
現場との乖離が大きくなってくると、プロジェクトは、社長の思い描くようには進んでいかなくなります。そうなってくると、最終的には、社長が困ることになります。結果として、悲しい結末を迎えているプロジェクトも少なくありません。

このように、「社長直轄」が悪い方向に回っていくと、
- 社長の思い通りには、プロジェクトの現場が進んでいかないにもかかわらず、
- 社長の意向だからと、軌道修正が適切になされずに、費用がどんどん膨らんでいく
ということになっていきます。
では、社長直轄のメリットを享受し、弊害を回避するためには、どうすれば良いか。地道に、コミュニケーションを重ねることが大事になります。

「社長直轄」を機能させるために必要なこと
社長が一次情報に触れる機会を意図的に設ける
やはり、大事なことは、社長自ら現場と向き合うことです。一次情報を得ることで、真の問題や不安に気付くことが大切です。そのうえで、社長は何を見るべきか/何を現場に任せるべきかの境界も明確になります
とはいえ、社長は忙しいです。現場と向き合うと言っても、時間に限りがあります。そのため、予め、会議体などを設けておくことが有効です。
- 中堅・若手との座談会
- 節目節目での慰労会
- プロジェクトルーム視察
社長が積極的に関わるところを明確にする
「何をやるか」「どこに力を入れるか」は、社長が決める必要があります。いったん決めたら、実行はプロジェクトマネージャと現場に託す姿勢が重要です。「任せる覚悟」も重要になってきます。
しかし、「任せる覚悟」が「丸投げ」になっている例も、多く見られます。

最後は責任を取りますから、あなた(プロジェクトマネージャ)の思った通りに進めてください。
一見「さすが社長」というようにも受け取れますが、「社長直轄」なのに、社長の想いが入る余地がありません。
「社長直轄」を謳うからには、社長としての関与・コミットメントを発揮したいです。

プロジェクト目標にも掲げた〇〇は、絶対に実現したい。〇〇に関わる課題や決定事項に関しては、必ず、私にも報告・相談してください。
進め方はお任せしますが、難しい状況になったら、遠慮なく相談しに来てください。
なお、プロジェクトの事務方の、プロジェクトマネージャやPMOの立場としては、こういった社長の関りは、予め仕組みかしておきたいところです。
- ステアリングコミッティでのアジェンダとして設定
- 該当テーマに関して、社長への個別報告会を定期的に設定
現場へのメッセージ発信の仕方を熟慮する
社長の想いは、得てして、視点が高すぎて、現場の中堅・若手には伝わりづらいことがあります。一方で、中堅・若手が、プロジェクトの実働部隊になりますので、彼らに想いが正しく伝わることがとても重要です。
そのため、「このプロジェクトで起きる変化が、あなたの仕事にどう関わるのか」を、現場の言葉で伝える必要があります。また、「だからこそ、あなたに任せたい」というメッセージも大切です。そういう言葉を投げかけることで、受け取る側も、責任感を持ちやすくなります。
チェンジマネジメントチームが活躍する場面
ここは、以前の回でも話した通り、チェンジマネジメントチームの力を借りたいところです。誰に、いつ、どのようにメッセージを発信すれば良いか、戦略的に考えることが必要です。
「社長直轄」プロジェクトは、社長という経営トップの力が、成功への大きな後押しになることが期待されています。しかし、権力がある一方で、現場との距離が遠いという特性上、誤った方向に走り出したときには、大変悲しい結果となることも多いです。
一番の解決策は、地味ですが、やはりコミュニケーションです。社長は大変忙しいポジションですので、どのようにコミュニケーションを持っていくのか、「社長直轄」の場合には、一層深く考える必要があります。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。ご意見・ご感想を頂けますと幸いです。
ITプロジェクト研究会




