ITプロジェクトで“突然の進捗遅延”が起きる理由と、潜在リスクの見える化方法

進捗管理は、プロジェクトの基本です。教科書もたくさんありますし、各ITパートナには独自の方法論やテンプレートもあります。しかし、色々なところで、つい先日まで予定通りに進んでいたはずのプロジェクトが、急にリスケジュールしなければいけなくなる場面を見受けます。

毎週きちんと、進捗会議をして、各タスクの進捗を確認してきたのに、なぜそんなことが起こってしまったのでしょうか。多くの場合、進捗管理の基本的なお作法には問題ありません。進捗管理で見ていた対象が、本来管理すべき全量ではなかったということがよくあるように思います。


管理されていない作業は追えない|進捗遅延の根本原因

背景にあるのは、色々な事情を文書化して管理するというのは、そんなに簡単ではないということです。プロジェクトの関わる情報をすべて文書化するのは不可能です。

そのため、必ず、管理できていない事象というものが発生します。管理できていないものは、進捗会議などで報告される機会は極端に減ります。そのため、色々な問題が、認識されないまま悪化していくということが起きてしまうのです。


タスク漏れ・情報断絶が発生する典型パターン

では、どんなときに管理から漏れてしまうようなことが発生するのでしょうか。いくつか例を見てみましょう。

報告が偏る|意識・無意識に“報告対象を絞ってしまう”現象

例えば、課題一覧を例に取ってみましょう。

一般的なプロジェクト管理ルールでは、各チームの課題も、プロジェクト標準の課題一覧に全量記載することになっています。

しかし、実際には、全量は載っていないことが、ほとんどです。

チーム
メンバA

昨日も、また新しい課題が出てきた。プロジェクトの課題一覧に登録しなければいけないけど、まだ内容が整理できていない。まずは、チーム管理している一覧にメモとして載せておこう。

チーム
メンバB

今日のミーティングも、色んな議論が活発にできた。いくつかは課題に上げなきゃいけないど、まずは、議事録を書くのが優先。あと、早くアクションにつなげなきゃいけないから、先にメールを書こう。チームの課題一覧に書くのは、後回し。

プロジェクト管理をする立場からすると、必要なものはすべて、一覧に記入して貰いたいところです。しかし、現実には、なかなか難しい実態もあります。

担当者の認識からタスクが“漏れ落ちてしまう”現象

プロジェクトでは、必ずタスク定義や役割分担表を作成して、必要な作業が漏れないようにしています。

しかし、こちらもやはり、文書化しきれない部分が残ります。また、状況は刻々と変わっていきますので、その場その場で新たに必要となるタスクもあります。

ERP
チーム

倉庫に関する業務フローは、物流チームが作ってくれるはず。我々は、倉庫作業の直前・直後のフローまでを作っておこう。

物流
チーム

倉庫だけで業務は完結しないから、倉庫の業務フローも、ERPチームが作ってくれるはず。ERPチームから問合せ・相談があれば、積極的に協力しよう。

このように、各チームとも全く悪気が無いのに、タスクが漏れてしまうことがあります。

しかも、進捗管理は、たいてい総量でしか管理していませんので、一部のタスクに遅れが出ていても、しばらく気付かないといったことが起きるのです。

“リスケでオンスケ”を繰り返す悪循環|隠れた遅延リスク

別の切り口のお話として、各チームの裁量で期日がいつのまにか後ろ倒しになることがあります。

小さいリスケジュールであれば、対して大きな問題にはなりません。しかし、これを繰り返していると大きな問題に発展します。

今週も期日を守れなかった。来週こそ、しっかり取り組みたい。とりあえず、1週間期日を延ばしておこう。見た目上も、オンスケジュールになるし、進捗会議で怒られるのを回避できる。

こうやって、「リスケしてオンスケ」を繰り返していくうちに、実態としては、大きな遅延になってしまっているケースは少なくありません。


潜在リスクを見える化する方法

基本的には、地道な取り組みになります。しかし、的確に、かつ、意思を持って取り組まないと、効果を得ることは難しいです。

見える化の方法例|PMOの役割が鍵

  • 全てを一覧に載せるように促す
  • 定期的なヒアリングを設定する
  • 合同ミーティングで相互確認させる
  • 折れ線グラフなど、状況を多角的に見るための様式を用いる

どうして管理できない/見逃してしまう状況が発生してしまうのかの原因を取り除くということが、大事になります。

独自管理の禁止と定期ヒアリングで全量把握する

プロジェクト標準の管理に極力乗って貰うということが、大事です。

チームにとっては、チーム独自のものがあった方が、融通が利いて便利です。しかし、そうしてしまうと、便利な方に流れがちなのが、人間です。そのため、不便な面はあるけれど、我慢をして貰って、プロジェクト標準の管理を徹底していくしかありません。

加えて、すべてを文書化することは不可能で、取りこぼしがあるのは避けられません。そこで、定期的にミーティングを持って、会話の中で、見えていないものが無いか、なにか違和感はないかを見つけられるようにすることも大切です。

合同ミーティングで情報の“断絶”を防ぐ

こちらも、コミュニケーションによって、問題を洗い出す手法です。

ひとりひとりは、それが正しいと信じ切っている場合、当人から何か報告があることは期待できません。そのため、関係者全員で集まって、それぞれの認識を共有し、認識齟齬や漏れを発見するのです。

なお、せっかく集まっても、それぞれの進捗報告をするだけでは、議論が深まりません。PMOや事務局などが音頭を取って、全体像やチーム間の連携について、意識的に各チームに話を振りながら確認していくことが重要です。

別の切り口で状況を再確認してリスクを顕在化

別の回でもお話しましたが、トレンドを把握するということは非常に効果的です。

今回の場合は、折れ線グラフで完了予定を見てみると、状況がよく分かります。表形式だといまひとつ分かりませんが、折れ線グラフだと、終盤に対応しなければいけない課題が山積みになっていることが理解できます。そこで、リスケで後ろ出しを繰り返してきたけれど、現実的でないスケジュールになってしまっていると気づけます。


進捗管理をやっていないプロジェクトは無いと思います。また、進捗管理のやり方も、さほど難しくありません。しかし、実際には、それまでおおむね順調と報告されていたプロジェクトで、リスケが必要なほどの遅延が突然報告されることがあります。

原因は、管理の土俵に上がってきていないものがある、ということです。どうやって、なるべく漏れをなくすようにしていくか。色々な切り口から、地道な取り組みをしていくしかありません。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。ご意見・ご感想を頂けますと幸いです。

ITプロジェクト研究会

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