グローバルプロジェクトの展開において、1か国目をどう始めるのか

以前の回で、グローバルで標準化すべき範囲をどうやって決めるかというお話をしました。
今回は、定義されたグローバルテンプレートを、どうやって各地域に展開していくかというお話です。展開にあたっては、1か国目(=パイロット国)での作業開始の前までに、何を決めておくべきか。パイロット国をどう決めるのかが非常に重要になります。
Must-Read Insights
1か国目(パイロット国)開始までに何を終わらせておくか
グローバルテンプレートの構築にあたって、色々なユーザ企業で悩むのが、どこまで準備をしてから、パイロット国での導入を始めるかということです。
パイロット導入開始"前"にすること
全地域が一緒に議論して作り上げるべきと決めたところまで、全地域の代表者が集まって取り組む
パイロット導入開始"後"にすること
全地域で取り組んだ内容を踏まえ、他地域からの委任を受けて、パイロット国が単独で、グローバルテンプレートを完成させる
大きく3つに分かれるように考えています。

- ケースA
グローバルテンプレートで実装すべき業務プロセスやルールに関して、方向性・コンセプトだけを決める。業務プロセスやルールの詳細は、パイロット国の導入時に詰める。パイロット国以外の国は、パイロット国で決まったものを原則受け入れる
- ケースB
グローバルテンプレートで実装すべき業務プロセスやルールに関して、詳細な業務フローや具体的なルールまでを決め切る。システム実装に関しては、パイロット国の導入時に詰める。パイロット国以外の国は、パイロット国で決まったものを原則受け入れる
- ケースC
グローバルテンプレートのシステム実装まで決め切り、グローバルテンプレートとして完成させる。パイロット国は、完成されたグローバルテンプレートの展開のみを行う
なぜ、そういった異なるケースがあるのでしょうか。
それは、パイロット導入の開始前(全地域での取組み)と開始後(パイロット単独での取り組み)とには、それぞれデメリットがあるからです。
一番大きな要素は、やはり自分事として、システム導入を考えられるかどうかです。机上で話をしている間は、どうしてもフワッとした議論になりがちです。具体的に、自分のところにシステムを導入する際の真剣さには遠く及びません。
一方で、自分のところへのシステム導入になると、他の地域のことなど構っていられなくなります。

このバランスをどこで取るかが非常に難しいところです。
ただひとつの正解というものはありません。ユーザ企業のビジネスモデルやガバナンスの状況をよく勘案して、決める必要があります。

1か国目(パイロット国)をどこにするのか
パイロット導入開始までに何を決めておくかと同じく、パイロット国をどこにするのかも、非常に難しいトピックです。
こちらも、唯一の正解はありません。最初の1か国目(パイロット)が成功しなければ、他の地域への展開へ進むことはできません。個々のユーザ企業における様々な事情を加味して、慎重に決めることが重要です。
主に考慮すべき要素
| 売上規模 | 「この地域で無事導入されたのなら、自分の地域でも大丈夫」と他の地域から思ってもらえるためには、ある程度の売上規模があった方が良い。 一方で、売上規模が大きいところは、業務プロセスも多岐に渡るため、難易度も大きい。 |
| 業務プロセスの網羅性 | グローバルテンプレートとしては、主要な機能は実装済みであることが望ましい。そのため、一通りの主要な業務プロセスのある国が望ましい。 一方で、システム実装難易度の非常に高い業務は、避けた方が無難。 |
| 標準化・導入の容易性 | パイロットが成功するかは、その他の地域展開に向けて死活問題。難易度が高すぎないところを選ぶべき。 例えば、インタフェース要件が多いと、標準化が阻害される可能性があるため、周辺システムが多い地域・国は避けた方が無難。また、現地の税制や商慣習が複雑なところも避けるべき。 |
| 本社からのガバナンスの容易性 | グローバルプロジェクトにおいて、本社からのガバナンスをどう維持するかは非常に重要。本社の意向が通りやすい地域・国を選ぶべき。 |
| 時差 | オンラインであっても、時差が大きいとミーティングを持ちつらいため、日本(コアチーム)との時差は小さい方が望ましい。 時差が大きい地域・国を選択する場合は、本社メンバが現地常駐や出張などで対処できることを確認しておくべき。 |
| 現地のITリテラシー | システム導入には、現地にシステム開発の知見のあるメンバが必要。 十分なITリソースが確保できるか、確保が難しい場合は、ITパートナの協力が得られるかの確認が必要。 |
グローバルテンプレートと同じくらい、1か国目をどのように始めるかは、非常に重要なトピックです。
繰り返しになりますが、唯一の正解というものはありません。個々のユーザ企業にとって、何がベストなのか、様々な要素を考慮して、慎重に決めることが何より重要です。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。ご意見・ご感想を頂けますと幸いです。
ITプロジェクト研究会




