グローバルなガバナンスを確立するためには、枠組みが重要

日本企業は、一般的に、グローバルプロジェクトが苦手です。

そのような中でも、成功したグローバルプロジェクトが少なからずあります。それらに共通することのひとつが、ガバナンス強化に向けた努力です。今回は、典型的なガバナンスのあり方について、お話します。

前提として、全地域が共通で利用する”グローバルテンプレート”を構築して、各地域に展開してくプロジェクトをイメージして、説明を進めます。なお、”グローバルテンプレート”って何?、どこまで標準として決めるべきなの?というのも、大事なテーマですが、こちらは、別の回で取り上げます。


グローバルプロジェクトの難しさの理由

日本企業がグローバルプロジェクトが苦手な大きな理由は、ユーザ企業のグローバルガバナンスの弱さです。

もちろん、グローバルに活躍しているユーザ企業は、たくさんあります。しかし、その多くは、各地域の経営を各地域に委ねていることが多いです。グローバル全体で動かす活動も、それほど多くは有りません。

そのため、グローバルなITプロジェクトで求められるようなガバナンスは、通常業務の職制上では持っていないことが多いです。一方で、グローバルなITプロジェクトは、比較的短期に、グローバルでの業務標準化を実現しなければなりませんので、非常に強いガバナンスが必要となります。

では、どうするか。

まずは、形から入る(枠組みから入る)ことが非常に有効です。


グローバルプロジェクトの典型的な枠組み

多少の名称の違いはありますが、多くのグローバルプロジェクトでは、以下のような枠組みの体制を作ることが多いです。

Global Core Team と Regional Team

Global Core Team  全体の方向性を決める

  • 全体戦略の立案
  • グローバル標準の業務プロセスやシステムを定義

Regional Team  各地域に、標準プロセスやシステム適用する

  • グローバル標準を、各地域の法制度や業務要件に適用
  • 業務プロセスやシステムの各地域への導入・展開

Regional Team として、各地域からは、全権代表が参加している必要があります。

グローバル全体で、標準業務プロセスを議論する機会はたくさんは持てませんので、なるべく少ない回数の検討会で決め切る。検討会後の後出しを許さない構図を持つことが重要です。

Business Process Owners と Solution Authority

Business Process Owners  標準化の推進者

  • 各地域(Region)の業務代表者と協議して、グローバル標準プロセスを定義
  • 標準化の実現に向けて、グローバル・各地域の標準化活動を推進

Solution Authority  ソリューションの番人

  • Business Process Owners が定義した業務要件を、技術的に実現可能な形に設計
  • 設計確定以降の仕様変更に関しても、ソリューションの番人として、厳格に管理

Business Process Owners には、各地域の代表者と交渉・説得して、標準業務プロセスをまとめ上げられる人材を配置する必要があります。

  • 海外駐在経験が長く、各地域のことをよく知っている
  • 各地域の代表者と深い会話ができる間柄である
  • 職制上、決定権がある

こういった人材がアサインできるか。業務チーム側の本気度が問われるところです。

「業務チーム側の本気度」が不足して、業務プロセスの標準化に失敗してしまう例は多いです。その場合、各地域の要件をそのまま取り込み過ぎて、巨大なシステムが出来上がってしまいます。場合によっては、途中で断念してしまうこともあります。

その本気度を高めるために役に立つもののひとつが、ステアリングコミッティになります。

Steering Committee

ステアリングコミッティは、グローバルプロジェクトでなくても、業務改革・DXを実現するための大型プロジェクトでは、大抵設置されます。役割は、マネジメントレベルで足並みを揃えて、プロジェクトをバックアップ。必要に応じて、大きな意思決定を行うことです。

グローバルにおいては、この役割がさらに重要になります。ユーザ企業のグローバルなガバナンスが弱いところに、強いガバナンスが必要なプロジェクトを遂行するからです。普段は無い強いガバナンスを発揮するために、ステアリングコミッティは欠かせないのです。

  • グローバルと各地域の主要CXOが、同じ将来像や課題感を共有
  • 業務プロセスの標準化を強力に推進ために、Global Core Team や Regional Teamに積極的に働きかけ

同じ将来像や課題感を共有するために、高頻度にコミュニケーションすることが大切です。

単に、プロジェクトからの報告を聞くだけでなく、各CXOも推進すべきアジェンダを持ち、CXO間で議論するような場となることが期待されます。

ITパートナ側のガバナンス

繰り返しになりますが、たいていの場合、ユーザ企業においては、グローバルプロジェクトを遂行するのに十分なガバナンスはありません。

その際、助けになるのが、ITパートナ側のガバナンスです。

ITパートナは、多くのユーザ企業のグローバルプロジェクトを支援しています。そのため、グローバルプロジェクトでの経験が多く、グローバルでどうガバナンスを敷けば良いのかの知見が有ります。特に、グローバルに活躍しているITパートナに、包括的に支援を依頼する場合は、よりガバナンスを効かせやすいです。

現場レベルのタスク状況や課題については、PMO, Core Team, Regional Team のぞれぞれにITパートナを配置して、ITパートナ間のガバナンスで、情報を流通させることが有効です。


日本企業は、一般的にグローバルプロジェクトが苦手です。パイロット導入はしたものの、グローバルテンプレート化できずに、実態としては、各国導入と変わらない結果になった例も多くあります。

ガバナンスだけで、すべてが解決する訳ではありませんが、ガバナンスのできていないプロジェクトは、たいてい失敗します。上記は成功するプロジェクトに共通する枠組みですので、ぜひ参考にしてください。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。ご意見・ご感想を頂けますと幸いです。

ITプロジェクト研究会

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