品質の考え方は、海外と日本ではやはり異なる | 日本の流儀は、日本だけ

一般的に、日本は品質を大切にする、物事を丁寧に進める、と言われます。一方で、日本のやり方は、「ガラパゴス」で、世界の潮流から遅れている、とも言われています。

これは、ITの世界でも同じです。

同じユーザ企業のなかでも、グローバルプロジェクトの遂行にあたっては、この考え方の違いに苦しむことが多いです。今回は、違いが生じている背景は何か、具体的な場面にどう影響するのかについて、お話していきます。


考え方の違い

まず、ITプロジェクトでよく見かける日本と海外の考え方の違いについてお話します。

冒頭でもお話したように、大きな観点では、ITプロジェクトにおいても、世の中一般の理解においても、同じことが言えます。

どちらが良いという話はありません。ただ、どこに重きを置いているかという違いに過ぎません。

しかし、これが、実際のITプロジェクトの各場面においては、大きな差となって現れます。

開発難易度が大きくなりがちな、日本のプログラム

一般的な日本製品にも言えることですが、日本人が設計するプログラムは、多機能になりがちです。

日本のユーザ

利用する可能性がある機能は、一通り入っていないと困る。いざというときに、システムでできないことがあると、業務が止まってしまう。

海外のユーザ

色々機能を詰め込まれても、画面が複雑になり過ぎて、使いづらい。イレギュラーなことがあれば、その都度、適当に対応するよ。

日本のユーザ

入力負荷が極力小さくなるように、入力画面は、我が社の業務プロセスに特化した、我が社固有のものを目指して欲しい。

海外のユーザ

パッケージ標準の画面にしてくれないと、市販のマニュアルが使えない。他社に転職したときも、画面操作を覚えなおさないといけないから、独自の画面なんて作らないで欲しい。

工数が大きくなりがちな、日本のテスト

機能がたくさんあるということ以外にも、システム品質に対するこだわりも、日本は強いです。

日本のユーザ

人間だから、間違ったボタンを押すことだってある。設計書に書いていないかもしれないが、ありうる間違いについては、適切に処理されるようにして欲しい。

海外のユーザ

慣れてくれば、めったに間違うことはない。そもそも、間違わないように入力することが、自分の仕事なので、そんなに色々機能を付けなくても、大丈夫。

この辺の考え方の違いから、個々のプログラムに対するテストについて、日本ではホワイトボックステスト。海外ではブラックボックステストを行うことが多いです。

日本のユーザ

UATでユーザがシステムを見る前に、システムテストでしっかり品質を上げてきて欲しい。ユーザは、最終確認をするだけだ。バグ出しを手伝わせないで欲しい。

海外のユーザ

要件がちゃんと満たされているかは、ちゃんとユーザが見る。バグ出しも積極的にやるよ。システム品質を、皆で一緒に上げて行こう!

こういった姿勢から、海外では、UATでのバグ出しが多いように思います。ユーザ企業も、一般的なバグ検知率の範囲内であれば、口うるさく言わないです。

一方で、日本では、システムテストで、システム品質を上げ切る必要がありますから、テスト工数は大きくなります。同規模のプロジェクトでも、海外の300%くらいのテスト工数になることが普通に見られます。


どう折り合いをつけるか

グローバルプロジェクトにおいては、この異なる違った価値観の人達が一緒に仕事をします。

日本にいると忘れがちですが、同じユーザ企業内でも、海外法人の人達が海外ローカルのプロジェクトを行うときは、海外流のやり方で進めます。

業務ユーザもIT部門のメンバも、海外です。加えて、ITパートナも、海外です。海外流を使わない理由はありません。しかも、海外では、それでプロジェクトが成功しています。つまり、海外では、海外流が正解なのです。

それが、グローバルプロジェクトにおいては、日本と海外とがコラボレーションして進めることになるため、お互いの流儀をすり合わせる必要があります。

正解は無い

残念ながら、唯一の正解というのはありません。個々のユーザ企業において、個別に決めていく必要があります。

ただ、普段のビジネスでの職制・ガバナンスがどうなっているかは、大きな考慮ポイントになります。

職制・ガバナンス(例)日本流・海外流の折り合い(例)
日本本社のガバナンスが強く、日本流の品質管理が徹底している日本流のやり方で、グローバル共通システムを構築
現時点では、日本本社のガバナンスは強いとは言えないが、この機会に、グローバルガバナンスを強化したい日本本社とコア地域の代表者が協議し、日本流と海外流の折衷案を定義する
海外法人の独立性が強く、日本本社は、計数管理しかしていないグローバル共通にはせず、日本、北米、欧州、アジアの四極、それぞれ地域のやり方で、地域共通システムを構築

今回は、色々なグローバルプロジェクトで直面する、品質に関する日本の考え方と海外の考え方の違いについて、お話ししました。

日本にいると、日本流が正解のように無意識に考えがちですが、そうではありません。考え方の違いを正しく理解して、どこで折り合いをつけるのかを冷静に決めていく必要があります。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。ご意見・ご感想を頂けますと幸いです。

ITプロジェクト研究会