海外ローカルプロジェクトに、日本本社はどのくらいかかわるべきか

これまで、日本本社が主導するグローバルプロジェクトについてお話してきましたが、今回は、海外ローカルの現地プロジェクトについて取り上げます。
海外現地のプロジェクトなので、基本的には、海外現地に任せるのが良いでしょう。現地の状況理解や文化、コミュニケーションのやり方などは、現地の方が良く知っています。しかし、日本本社が関わった方が良い場合、積極的に関わった方が良い場合もあります。
海外現地の力量
海外現地に事務所を置くということは、海外現地にある程度の自治権を設けるということです。海外ローカルのプロジェクトも、海外現地のために必要なものですので、現地に任せた方が良いという考え方があります。
一方で、海外現地の設置理由は、日本本社がグローバルにビジネス展開をする戦略を実現するためです。そのため、日本本社の意向が一定程度反映されるべきです。

そこで、日本本社は、どの程度関与すべきかが大事なところになってきます。それを見極めるためには、いくつか考えるべき要素があります。最も大事な要素は、海外現地にプロジェクトをマネジメントできる能力・体制があるかです。
海外の事務所の役割は、現地での営業・販売や、生産です。日本本社に比べると人材も多くはありません。そのため、管理部門やIT部門は、あまり大きくないことが多いです。

そのため、プロジェクトを遂行するにあたって、以下の能力が不足していることがあります。結果として、小規模で、比較的簡単なはずのプロジェクトが、暗礁に乗り上げることが少なからずあります。
- ITパートナに対する目利き
- プロジェクト費用に対する目利き
- 要件を取りまとめるノウハウ
- 進捗管理や課題管理などのノウハウ
スキルや経験がないのであれば、現地のITパートナに頼れば良いのですが、そもそも、ITパートナに対する目利きも十分にできないというのが苦しいところです。
もちろん、ユーザ企業によっては、APAC本部や欧州本部などを設けて、そこに管理本部や域内IT部門があります。そういった企業では、海外現地で十分プロジェクトを管理・遂行することができます。

ただ、この辺りの見極めが十分にできずに、苦労している現地プロジェクトは多いように見受けます。
ここまで、海外現地の事情(海外現地で、プロジェクトをやり切れるかどうか)で、日本本社が関わる必要がある場合について、お話してきました。次に、日本本社としてのグローバル方針により、日本本社が関与すべき場合について取り上げます。
現地に任せるとしても、日本本社が関わるべきこと
冒頭でも少し述べましたが、日本企業が海外現地に事務所を置くということは、日本本社のグローバル戦略を海外で実現したいからです。ITプロジェクトの観点で言うと、主要なものは、日本本社主導のグローバルプロジェクトで実現することになります。一方で、日本本社も、支援体制に限界がありますから、方針だけ提示して、方針に従う限りは、海外現地にプロジェクトを任せる場合もあります。
例えば、以下のような場合です。
- コスト抑制のため、日本本社でライセンスをまとめて購入したいので、ERPやSCPのパッケージは、採用する製品を限定する
- クラウド利用する場合は、アセットをグローバルで利用したいので、同じクラウドサービスを利用する
- グローバルでの見える化促進のため、マスタやコードに関するルールは、グローバルで共通にする
加えて、プロジェクト運営に関しても、海外現地に委ねるとしても、日本本社の見えない所で、問題化することを防ぐために、プロジェクトの枠組み自体は提供して、程度の差はありますが、日本本社から状況をモニタします。
日本本社は何を管理すべきか
これら、日本本社が管理するものについては、予めて定型化・文書化しておくことが有用です。こうしておけば、海外現地にとっても「ここまでは、勝手にやって良い」「ここは、日本本社に確認しなければいけない」ということが明確になり、動きやすくなります。
日本本社は、何を管理すべきか
- 全社共通のIT方針
- データ管理方針と整合性
- ITセキュリティ基準
- プロジェクト管理の標準化
- ベンダ評価や契約レビュープロジェクト進捗と成果
そして、そのために重要なのが、ユーザ企業として、どういうグローバル戦略を持つかということです。
ユーザ企業としてのグローバル戦略
IT組織自体のガバナンスのために、IT部門としても、もちろん、上記のように「何をグローバルで、管理するのか」を定義しますが、業務部門も含めて、会社として、各地域とどう向き合うのかを定義しておくことが非常に重要です。

他の回でも話しましたが、グローバルプロジェクトにおけるガバナンスは、業務部門の職制で、普段行っている以上になることは稀ます。海外ローカルプロジェクトでも、同じです。普段の業務として、海外現地事務所が行っている以上のことができることは滅多にありません。
ユーザ企業として、グローバル戦略をどう考えるのか、それをもとに、日本本社の役割・能力、海外現地に求める役割・能力を決めていく必要があります。
今回は、日本本社主導のグローバルプロジェクトではなく、海外ローカルのプロジェクトのお話でした。海外現地のことなので、海外現地に任せるというのが基本ですが、とはいえ、結局のところ、日本本社の関与は、ある程度必要というお話をさせて頂きました。
ユーザ企業にとって、海外現地の事業所は、日本本社のグローバル戦略を実現するための存在で、全く勝手に何でもやって良い訳ではないからです。海外現地の自治権とのバランスも大事ですので、予め、定義・文書化しておくことが有用です。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。ご意見・ご感想を頂けますと幸いです。
ITプロジェクト研究会



