グローバルテンプレートで何を標準化したいのか、明確に考えてますか

グローバルプロジェクトで必ず論点になるのが、グローバルテンプレートをどうするか?ということです。
「どうするか?」と曖昧な書き方をしたのは、意外に多くのプロジェクトで、「グローバルで、何を標準化したいのか」「標準化するメリットは何か」ということが、しっかり議論・合意できないまま、プロジェクトに突入しているように見受けられるからです。
今回は、グローバルテンプレートに関して、どういった視点で考えなければいけないのかについて、お話ししていきます。
標準化にも、色々な度合いがある
なぜだか、多くのプロジェクトで、グローバルプロジェクトの理想は「グローバルでの完全な標準化(グローバルワン)」だと思われているように感じます。
しかし、実際には、色々な形の標準化があり、ユーザ企業の現在地によって、正解は異なります。

| マスタ、コードを標準化 | 業務アプリは、各地域で別々のものを利用するが、データドリブン経営の実現のため、マスタやコードに関しては、グローバルで標準化 |
| 会計業務の標準化 | データドリブン経営を更に強化するとともに、グローバルでの決算の早期化、コンプライアンスの強化を実現 |
| 特定の主要業務の標準化 | グローバルでのサプライチェーン、調達、アカウントマネジメント、原価管理など、特定の業務領域に絞って、グローバルな標準化を実現 |
| 完全な標準化(グローバルワン) | マスタやコードに加えて、主要な業務全てについて、グローバルで標準化 |
ひとつ言えることは、目指す標準化の度合いが大きければ大きいほど、標準化のための苦労も大きいということです。
一方で、標準化の度合いが大きくても、その効果はあまり無いことは多々あります。効果のあまり無い標準を、一生懸命進めても悲しい結果しか生みません。

プロジェクトが目指す標準化は、ユーザ企業の特性にあったものであるべきです。次に、幾つかの標準化のパターンを見て行きましょう。

企業の現在地に見合った標準化を選ぶべき
グローバルでどういった標準化を目指すのかについては、実は、日本内での標準化の視点と基本的には変わりません。
大きく異なるビジネスモデルがある場合
下記のユーザ企業の例では、日本・アジアと欧米で、ビジネスモデルが異なります。

- 同じ製品を取り扱っていることに加えて、生産プロセスは、日本のマザー工場のものを各国で利用している
- 販売購買については、直販モデルとOEMモデルで、プロセスが大きく異なっている
こういう状況下では、直販モデルとOEMモデルを、無理やりにひとつのモデルに統合するのは、得策とは言えません。モデルが異なっているのには、異なっていることが必要だからです。
そう考えると、以下のように、販売・購買については、ふたつのモデルを作り、それ以外はグローバルで統一するのが良さそうです。

他の例も見てみましょう。
各地域のビジネスの独立性が高い場合 その1
ビジネスモデルが似通っていても、標準化のメリットが小さいケースもあります。
各地域の独立性が高い場合です。
その場合、全地域の標準化にあまりメリットはありません。グローバルな会社間取引などの業務プロセスは標準化して、共通仕様としますが、地域ごとの標準化に留めるケースが望ましいと考えます。

さらに、地域の独立性が高いケースもあります。
各地域のビジネスの独立性が高い場合 その2
日本企業が海外進出する場合、現地企業を買収したり、地元企業と合弁会社を作ったりして、進出するケースが多くあります。そういったケースでは、間接的なガバナンスになり、本社からの業務的な連携もあまり無いことがあります。

普段の業務・職制上も、地域をまたいだ連携が無く、近い将来にも予定が無い場合は、無理に標準化するメリットはありません。グローバルで業務が標準化されても、ビジネスとしてのメリットが無いからです。
そういった場合は、グローバルでの計数管理のため、マスタやコードとKPIの標準化を行うものの、業務アプリに関しては、各地域個別のシステムを入れるだけ十分だと考えます。

最後に、もうひとつの例を挙げます。
各地域のビジネス規模に差がある場合
業務プロセスの共通性は大きいものの、地域毎のビジネス規模の差が大きい場合があります。
そういった場合、売上規模小さい地域は、高機能なERPの高額なライセンス費用を負担する余裕が無いケースがあります。

ユーザ企業によっては、グローバルでの標準化に重きを置いて、費用負担に傾斜を付けて、規模が小さい地域でも、高機能ERPを使えるようにすることがあります。
一方で、費用対効果が無いと考えて、規模が大きな地域には、高機能ERPを。規模が小さい地域には、低価格帯ERPを導入する「2層ERP戦略(2 Tier ERP Strategy)」を採用するユーザ企業も多いです。

このようにグローバルでの標準化と言っても、色々な形態があるのです。
冒頭でお話したように、グローバルワンだけが、グローバルプロジェクトの正解ではありません。しかし、身の丈に合わないグローバルワンを目指して、大変苦労しているグローバルプロジェクトは多いです。
グローバルテンプレートには、色々な度合い・形態があります。大事なことは、ユーザ企業のビジネスにとって、メリットがあるのかということ。グローバルワンという言葉に惑わされないことが大切です。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。ご意見・ご感想を頂けますと幸いです。
ITプロジェクト研究会




