グローバルプロジェクトでは、まずは文化の違いがあることを認めることから始める

以前の回で、距離が離れていると、疑心暗鬼になりやすい、というお話をしました。その根底にあるのは、地域・国ごとに違う仕事の仕方や考え方の違いです。「なんだか、かみ合わないな」「なんで理解して貰えないんだろう」というストレスが、疑心暗鬼を生むことになります。

この違いは、対面でコミュニケーションしても無くなる訳ではありません。そのため、まずは、この違いを理解するということが必要になってきます。もっと言うと、「違いがあって当然」ということを理解するということになります。


地域・国ごとに異なるプロジェクトの進め方

下記は、一般的に言われる各地域のプロジェクトの進め方の違いです。やはり、皆さんのイメージ通り、日本が一番綿密に物事を進めます。比較的日本に近いアジアの国々も、日本の人たちからすると、粗いと見えます。

日本計画を綿密に立てて、その通りに進めたい【段取り八分】
アジア日本よりは粗いものの、日本の進め方に近い。日本のやり方に合わせてくれる
ヨーロッパ計画は立てるが、状況次第で、合理的な理由があれば、臨機応変に計画変更する
アメリカ計画は大枠に留めて、進めながら細部を決めていく【Fail First, Learn First】

比較的日本に近いと言われるアジアであっても、結構違います。現場寄りの例としては、日本では当たり前と思われている「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」も、当たり前ではありません。

ホウレンソウ(報告・連絡・相談)に対する意識

日本日本以外
組織の和を重んじる。組織内の調和や合意形成を優先。対立や異論はなるべく避ける。個人の自立性・成果を重んじる。任されたなら、自分で考え、責任を持ってやる
頻繁な報告・相談により、上司と足並みをそろえることが期待される成果が出ていれば、上司との頻繁な接触は不要とされる
小さな進捗や問題も都度共有することが「誠実さ」「責任感」として重視される進捗や問題は、ある程度まとまってから共有する。細かい共有は「非効率」「判断力不足」と見なされることも

ただ、こうやって、客観的に見ると「日本のやり方と日本以外のやり方に優劣は無く、考え方の違いなんだな」ということが、なんとなく理解頂けるかと思います。多くの日系企業が世界で伸び悩んでいることを考えると、日本以外のやり方を取り入れた方が良いくらいかもしれません。

しかし、いざ、プロジェクトをするとなると、日本流に固執したくなるのが、日本の人たちの常なのです。


日本の人たちが陥りがちな心理

グローバルプロジェクトといっても、日本企業のプロジェクトですから、たいていは、日本主導で大きな計画を立てることになります。

なんだかんだ言って、日本のやり方が一番優れている(と思いがち)

日本の人たちは、日本流を正しいやり方として、若手の頃から叩きこまれています。そのため、日本流が最も優れた方法だと意識・無意識に思いがちです。特に、日本は「品質に優れている」と世界の国々からも認められていますので、プライドを持って、そう考えているように思います。

実際、多くの日本系のユーザ企業の皆さんは、日本流の生産方式やサービスを海外に展開するということを日々行っていますので、ITプロジェクトにおいても、その延長線上で考えがちなように考えます。

また、実は、ITパートナ側の人たちも同じです。外資系のITパートナであっても、普段一緒にプロジェクトをするのは、日本のユーザ企業です。そのため、外資系のITパートナの日本法人の人たちであっても、しっかりと日本流に染まっているのです。

しかし、ここで、理解すべきことがあります。

それぞれの地域・国では、彼らのやり方でうまくいっている

  • 日本人にとって、違和感があっても、日本以外の人たちにとっては、それが普通
  • 日本のやり方が唯一の正解では無いし、他のやり方が間違っている訳でもない
  • 他の地域・国の人たちが、自分たちのプロジェクトをやるときは、そのやり方でうまく行ってい

最終的に、日本のやり方に合わせて貰っても良いのですが、まずは、ここを理解することが、スタートラインになります。

では、どうするか。他の回でも、繰り返し言っていますが、ユーザ企業内の職制での普段のガバナンスを理解することが、人口になります。


ガバナンスのかたちは、いろいろ

想像に難くないと思いますが、日本のユーザ企業といっても、そのガバナンスのあり方は様々です。

ちなみに、例えば、日本の意向が浸透しやすいと言われる東南アジアでも、色々な形態があります。いくつかケースをお話します。

  1. 現地社長から役員、課長クラスまで日本人で、完全に日本のガバナンスが敷かれている
  2. 実務を担う部課長クラスは、東南アジア現地の人達だが、皆、日本への入学経験があり、日本語も堪能
  3. 現地社長はインド人。合理的なトップダウンのガバナンスになっている
  4. コンサルティング会社からの転職者が多く、欧米的なカルチャーとなっている
  5. 地元の財閥との合弁会社であり、生産系には日本のガバナンスが効くが、それ以外は地元財閥の力が強い

このように、同じように東南アジアに進出している日系企業を取り上げただけでも、色々です。大事なことは、ステレオタイプで決めつけないこと、相手のやり方を尊重することです。

❶や❷のケースは、東南アジア現地に、日本流が浸透していると思われますので、日本流が合っていそうです。逆に、❸や❹のケースでは、欧米系のやり方の方が合いそうです。➎については、生産以外のガバナンスは地元財閥系のマネジメントに渡してしまった方が良いかもしれません。

結局のところ、唯一の正解というものはありません。各地域の特性・状況などを踏まえて、どういうガバナンス・コミュニケーションスタイルにするのか、丁寧に考えていくしかないのです。

ちなみに...

面従腹背(表向きは従っているように見せながら、内心では反発していること)は、どこの地域・国でもあります。

日本人は「会議で言っていることと違うことを、会議が終わった後に言う」と言われます。しかし、形は違えど、同じことは、他の地域・国でも起こります。国によっては、議事録が残っていても「あの時と、いまは違う」と平気でひっくり返してきたりします。

そういうことが、一定起こることを想定して、冷静にプロジェクトを進めることが肝要です。


前段でお話したように、日本の人たちは、若手の頃から「日本流が優れている」と叩きこまれています。そのため、グローバルプロジェクトにおいて、他の地域や国が日本流に沿った行動をしない場合に、違和感やストレスを感じてしまいます。

まずは、「日本流は日本だけ」ということを理解することが、スタートとしてとても大切だと考えています。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。ご意見・ご感想を頂けますと幸いです。

ITプロジェクト研究会

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グローバルプロジェクトにおいて、距離が遠いのはやはり不利