[論説] ホウレンソウを徹底し過ぎて、日本企業は大きなリスクテイクができなくなった?


今回は、論説です。これまでの経験や知識を踏まえて、研究員が考えていることを問題提起する回です。一般的な見解とは異なるかもしれません。一面的だったり、正しくなかったりすることがあるかもしれません。ぜひ、お問合せフォームからご意見を頂けますと幸いです。


今回のテーマは「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」です。日本では、ビジネスの基本のキにあたる心得です。しかし、海外にはそういったフレーズはありません。それでも、海外企業はビジネスに成功していますし、難しいITプロジェクトも完遂させています。

一方で、日本企業がグローバルプロジェクトをすると、日本人メンバから「海外メンバは、ホウレンソウができていない」との不満をよく聞きます。でも...

海外の人達も、普段問題無くITプロジェクトを成功させている。日本人と仕事をすると、どうして問題が出てくるのだろう...?

という疑問が湧いてきます。今回は、そこを深掘りしてみました。


ホウレンソウとは

改めて説明する必要もないと思いますが、ホウレンソウは、日本のビジネスマンとして大事なコミュニケーションの心得です。意思疎通を意識的にとって、物事をスムーズ動かすための大事なツールです。

日本企業でキャリアを積み重ねた人にとっては、とても大事で有効な考え方だと思います。当然、自分でもホウレンソウを心掛けているでしょうし、部下にも指導しているでしょう。

一方で、海外においては、そうではないようです。どちらかというと、

いちいち報告する人は、自分に自信がない人。自分で判断できない人

と思われてしまうようです。

上司とのコミュニケーションに関する考え方の違い

こうやって見てみると、海外の人達の考え方も一理あるように思います。「任せた仕事なのに、いちいち聞いてくるな」「自分で考えて、仕事しなさい」という考え方も、納得できます。

では、どうして日本ではホウレンソウが重視されるかを深掘りしてみました。


日本企業でホウレンソウが必要になる理由

日本文化でよく言われることですが、空気や行間を読むことが非常に重要です。多くの職場で、「気の利く人」が、求められる人物像だったりします。

日本企業では、もともと細かく指示が出ているのに加えて、更に関係者の意向や状況の変化に合わせていくことが求められます。一方で、上司も細かいところを気にしますから、上司の意向と合致しているか、頻繁に確認する必要があります。そこで、ホウレンソウという行動様式が重要になってくるのです。

良いか悪いかはさておき、日本人は細かく、進め方にもこだわるという資質が要因のようです。

  • 海外 | 大きな目的・ゴールが達成されていれば、細かい部分や進め方は気にしない
  • 日本 | 細かい部分や進め方も含めて、気を付けるべき

このあたりの感覚は、期日に関する考え方にも違いをもたらしているように考えます。

日本人
PMO

海外現地の販売チームリーダは、また期日に遅れた。期日に遅れそうなら、リスクが出てきたタイミングで報告して欲しかった。ホウレンソウができない!

海外現地
販売リーダ

期日までに完了できる可能性もあったので、ギリギリまで頑張っただけ。別のタスクを調整すれば、今回間に合わなかったタスクは短期間でリカバリできる。日本のPMOがイチイチ気にするところじゃないのに...

日本人は、結果よりもプロセスを重視しがちな国民性ですから、こういったプロセスを臨機応変に考える姿勢にはイライラしてしまう人も多いのではないかと思います。しかし、認識しておかなければならないのは、

どちらも正解。行動原理の違いなだけ

ということです。実際には、多くの日本企業のグローバルプロジェクトでは、海外メンバに日本流を理解して貰うことで、違いを解消しています。ただ、この行動原理の違いを正しく理解していれば、もっと違った解決策があるように考えます。

さて、前置きが長くなりましたが、いよいよ本題です。


ホウレンソウによって、日本人はリスクテイクできなくなった!?

ここまでは、プロジェクトにおけるホウレンソウをお話してきました。ここからは、少し話を大きくして、日本のビジネスマンのメンタリティに対するホウレンソウの影響について仮説をお話したいと思います。

前述のように、海外の人は、任された仕事は、上司にいちいち相談しません。自分でやりきろうとします。そのため、日本人の目からすると、たいへん危なっかしく見えます。

日本人

あの海外現地リーダ、今日の会議で「やります」と言っていたけど、プロジェクトリーダに事前に相談しているのかな。勝手に判断したら、後で大きな問題に発展するかもしれないよ。

一方で、こうも考えられます。

  • 海外の人は、管理職でない頃から、自分の判断でリスクテイクしている
  • リスクテイクする経験を、キャリアの各段階で積み重ねているから、CEOとして非常に大きなリスクテイクができようになる

反対に、日本人は、ホウレンソウによって、リスクを上司やチームと共有しながら、仕事を進めていくスタイルです。そのため、個人としてリスクテイクをする経験は、実はあまり積めない構造になっていると考えています。

さらに、日本の人たちは、新入社員のころから、ホウレンソウを叩きこまれいますから、リスクをテイクしない習慣が身に染みて、身についています。

そういった人が、経営者になって大きなリスクテイクをできるのか...というと、やはり厳しいように思います。実は、それが日本企業にとって大きな足かせになっているのではないかと感じています。

結果論として、日本企業は、海外企業の成長企業に比べて、規模やスピードで劣っているのが現状です。そんななか、「ホウレンソウは、日本の企業文化だから」と海外メンバに押し付けて良いのかについて、立ち止まって考えてみても良いのではないでしょうか。


今回は、論説ということで、研究員の私見を述べさせて頂きました。実は、問題提起というよりも、グローバルプロジェクトにおいて聞く「海外メンバの行動様式が理解できない」「海外メンバは、責任感が無い」などと言った声に対して、別の観点からも考えてみて欲しいという意図で、記事を書かせて頂きました。

いろいろと異論・反論があると思いますので、ぜひご意見・ご感想を聞かせて頂けますと幸いです。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

ITプロジェクト研究会