まずは、基本的なプロジェクトのコスト構造を理解しよう❶ | 要件定義

プロジェクトマネジメントの大きなテーマのひとつは、やはりプロジェクトのコストです。
コストをどうコントロールしていくかには、色々なノウハウがあります。ただ、そのお話をする前に、費用見積の基礎的なことを理解頂いていた方が良いかと考えました。
そのため、まずは、今回からコスト構造4回、見積の手順1回、精査の手順1回の計6回で、プロジェクト費用の基礎に関して説明していきたいと思います。
大きな要素は、工数
プロジェクト費用は、大きく、「工数をもとに見積もられるもの」と「それ以外」に分けられます。
「それ以外」に類するものは、見積前提がある程度明確なため、見積もり忘れが無い限りは、あまり大きな問題にならないことが多いです。
一方で、工数については、見積前提の置き方に大きな振れ幅があるため、大きく外すことがあります。金額的にも大きな割合を占めますので、プロジェクトへの影響は甚大です。

第1回目の今回は、まずは、「要件定義」に関する工数見積について、お話します。

要件定義の主要な見積前提
要件定義に掛かる工数を算出するにあたって、大きな要素となるのは「業務プロセスの数」と「会話すべき関係者の数」、それと「ユーザ企業・プロジェクトの個別事情」になります。

まずは「業務プロセスの数」について、お話します。
業務プロセスの数
下記2つのプロジェクトは、両方とも製造業のユーザ企業に対するERP導入です。
製造業だから、確かに要件定義で検討すべきことに類似性はありますが、ユーザ企業によって、検討すべき業務プロセスは様々です。


プロジェクトAでは、要件定義フェーズで作成する業務フローは、見込生産の国内販売だけで良さそうだね。

一方で、プロジェクトBは、検討しなければならない業務プロセスが多いね。作成しなきゃいけない業務フローも、4倍はありそう。
つまり、検討すべき業務プロセスが多くなると、要件定義で作成しなければいけない成果物が多くなります。業務フローだけでなく、要件定義書、業務機能一覧など色々ありますので、結構なボリュームになります。
結果として、成果物を作成する工数も掛かりますし、そのための検討会の数も多くなります。そして、検討会が多くなると、その準備・運営などでも工数掛かります。

さて、検討会ですが、そのあり方によって、工数の掛かり方が大きく変わります。次は、その辺を見て行きましょう。
会話すべき関係者の数
営業部が3つあるユーザ企業をイメージしてください。
第1営業部が全営業部を代表して、要件を決めるケース
このケースでは、プロジェクトチームは、第1営業部とだけ話をすれば大丈夫です。

営業部ごとに仕事内容に差異があるため、全営業部と話さなければならないケース
この場合は、話さなければならない人は、先ほどのケースの3倍になります。もし、各地に伺わないといけないとすると、検討会自体も3倍必要ですし、東京・大阪・九州への交通費がそれぞれ掛かります。

ちなみに、この辺りは、本当に業務プロセスが違うことが多いというよりは、ユーザ企業内のガバナンスによるところの方が多いように見えます。

うちの営業部は各地域に根差して活動しているから、それぞれ独自のやり方をしている。みんな、営業本部の配下にあるけど、数字を管理している以外は、あとは各営業部の自主性に任せているよ。

ん? でも、それって、営業部横串での活動もやりにくいし、会社内の業務プロセスが共通化されていない理由にはならないのでは。単純にガバナンスが聞いていないだけな気が...
ともあれ、ここでは、話すべき相手が増えると、工数が膨らむということを覚えておいてくだい。
最後に、個別事項についてお話します。
ユーザ企業・プロジェクトの個別事情
「対象業務プロセス」と「会話しなければならない関係者数」をもとに、標準的な要件定義工数を出すことができます。
これに加えて、ユーザ企業・プロジェクトの個別事情を加味していきます。
ここでは、初めて標準原価計算を導入しようとしているユーザ企業の例を取り上げます。

いままでは実際原価計算しか使っていなかったけど、これからは標準原価計算も行って、原価管理を高度化したい。
でも、初めての試みなので、まずは初歩的な理解から始めたいし、想定される課題についても、時間をかけて取り組みたい。

承知です。では、①今回採用予定のパッケージAの原価管理プロセスをしっかり理解するためのセッションを設けるとともに、②想定課題のなかで一番大きそうなBOMについての検討会の数を多めに設定しましょう!

このように個別事情を加味して、工数を調整します。
今回は見積構造の第1回目として、要件定義を取り上げました。
見積金額を出すためには、まずは、工数を試算する必要があります。そして、その工数を決めるための要素が見積前提です。妥当な工数見積をするためには、この見積前提を外さないようにすることが肝要です。
どのように見積前提を置くのかということにも、また色々なノウハウがあるのですが、まず今回は、どういう見積前提が重要なのかをご理解頂けると幸いです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。ご意見・ご感想を頂けますと幸いです。
ITプロジェクト研究会








